一般の方へ
皆さんは、「再生医療等製品」という言葉を聞いたことはありますか。
再生医療等製品は細胞や組織を加工してつくられるもので、再生医療を行う際に、医薬品や医療機器同様に治療のために使用されるものです。
再生医療等製品をつくるための原料の一つに体性幹細胞があります。
体性幹細胞は私たち人間のからだの中にある細胞であり、異なる細胞に変化して、さまざまな組織の元となったり、からだの機能を修復する力を持っています。
体性幹細胞は人間の細胞や組織から抽出されますが、現在、日本国内では手に入れることが難しい状況です。
そこで当院では、倫理面や法律面などの条件をしっかりとクリアにし、通常の手術や治療等で廃棄されることになる細胞や組織を皆さんからご提供いただき、製薬企業等へ安定的に体性幹細胞を提供する仕組みづくりを行っています。
このことが国内の再生医療等製品の研究開発の活性化につながり、今まで有効な治療法のなかった病気で苦しんでいる人々の大きな希望となります。
再生医療の発展のために、皆様のご協力をお願いいたします。
ご提供いただく細胞・情報
慶應義塾大学病院では、手術の際に切除や吸引等により、通常は廃棄されることになる組織や細胞(脂肪や骨髄等)について、ご提供をお願いしております。形成外科領域や整形外科領域等の疾患に対して実施される通常の手術の過程(切除や吸引等)で生じる組織や細胞のご提供となりますので、提供のために余分に切除等をすることはありません。
また採取日や年齢、性別、人種、健康状態、感染症検査結果、既往歴などの診療情報も必要になりますので、あわせてこれらの情報についてのご提供もお願いしております。なお、健康状態や既往歴等によっては組織や細胞のご提供をいただけない場合や、採取後であっても検査結果によっては、いただいた組織や細胞が製品開発等に利用できない場合があります。
上記に記載しました各種情報については、個人が識別できないように加工(お名前をアルファベットや数字などに置き換える等)された後に製薬企業等に提供されるため、製薬企業等が個人を特定することはできません。
ご参加の流れ
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1
組織・細胞の提供にご興味のある方には、担当者より事業内容を詳しく説明いたします。
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2
説明をご理解いただき、ご提供いただける方には同意書にご署名をいただきます。
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3
術前検査の際に、感染症の検査として不足の項目があれば、あわせて採血をさせていただきます。
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4
予定通りに手術を受けていただきます。
手術時に切除や吸引などの操作により、通常は廃棄されることになる組織・細胞を採取します。 -
5
採取した組織・細胞と必要な情報は個人が識別できない状態で、予め「慶應義塾大学病院ヒト細胞等提供倫理委員会」にて審査され、病院長が提供について許可した製薬企業等に提供されます。
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6
感染症の検査のため、後日※採血をさせていただきます。
※抗体などが検出されるまで時間がかかるためです。
Q&A
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提供した細胞はどのように再生医療につかわれるのですか。治療が行われる病気の特徴、患者の数、効果、安全性など教えてください。
採取された細胞は酵素などを用いて複数の細胞を1個ずつの細胞にしたり、複数の細胞のまま培養し、治療が必要となる疾患に合うように分化(細胞の形や特徴を変化)させるなどして使用します。治療の対象となる病気は様々あります。例えばからだのある部分が十分な機能を果たすことが出来なくなるような病気や状態(変形性膝関節症、心不全、脊髄損傷等)、がんも治療の対象となります。患者数は疾患ごとに異なります。効果や安全性については、再生医療等製品として承認されたものは一定程度の効果と安全性(副作用等)が確認されていますが、効果の大きさや安全性は投与された人ごとに異なる場合があります。
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具体的な採取方法を教えてください。
手術の際に実施される切除・吸引などの操作後に、通常は廃棄される組織や細胞を無菌的に採取します。
※なお、切除や吸引を行う場所によって無菌的に採取ができない場合もあります。 -
安全性の担保はどのようにとるのですか。
今回の事業では通常の診療行為(手術)で廃棄されることになる組織や細胞を利用しますので、提供のために新たに安全性の担保が必要になることはありません。
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提供は無償ですか。検査代はかかりますか。
はい、ご提供については無償です。通常の診療以外で必要となる検査や交通費については、ご本人に追加でご負担いただくことはありません。
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氏名などの個人を特定できる情報も製薬企業等に提供されるのでしょうか?
製薬企業等に伝える情報は個人が識別できないように加工されるため、ご本人が特定される情報(氏名等)は含まれません。
また、ご提供いただく細胞に関する情報は病院内のシステムで管理されます。 -
細胞を提供する企業はどのような会社ですか。
製薬企業等にまず細胞を提供します。将来的には再生医療等製品だけでなく、人に投与することになる特定細胞加工物を製造する製薬企業等や、医療の進歩のために必要となる研究用の細胞を扱う製薬企業等が対象となることも想定しています。